切削加工 の基礎と有名企業

目次

・工作機械と金属加工

・丸い物を加工する=NC旋盤

・角い物を加工する=マシニングセンタ

・旋盤加工もマシニング加工もできる複合加工機

・工作機械は日本が強い!工作機械ビックスリー!

・切削加工機の将来

 工作機械と金属加工

 私たちの身の回りにあるスマートフォンや自動車など、多くの工業製品は金属加工してできた部品や、金属を削って作られた金型を使って作られています。このような加工をする機械を工作機械といい、工作機械でも切削、研削、せん断、鍛造などあらゆる加工方法がありますが、今回は金属を切削加工する機械を紹介します。

 丸い物を加工する=NC旋盤

金属の切削加工で多く使われている機械はNC旋盤とマシニングセンタに分けられます。

 NC旋盤は、ワーク(加工する対象物)を回転させて、固定した刃物に当てて加工するもので、主に丸物と呼ばれる円盤状、円筒状のものを削ります。具体的にはシャフトやピン、ボルトなど駆動部品・回転部品の製作に使われることが多いです。

旋盤など金属加工の多くは、職人が機械を操作するハンドルを動かし一品一品加工していました。図面通りに加工するには手先の微妙な操作が要求され、職人には高い技術力が必要でした。ところがコンピューターを使ったNC(numerical control=数値制御)装置の誕生により、機械を制御するプログラムを入力することで、自動で同じものを大量に生産することが可能になりました。

旋盤加工

旋盤加工(ワークが回転し、刃物は固定)

角い物を加工する=マシニングセンタ

 マシニングセンタは、旋盤とは逆にワークは固定で、刃物を回転させて加工する機械です。主に角物と呼ばれる四角いものを削ります。具体的にはプレートやケースなど機械のベース部分の製作に使われます。刃物を回転させて加工する機械は、ボール盤(穴あけ)、中ぐり盤(穴を広げる)、フライス盤(平面削り)、など様々な機械がありましたが、マシニングセンタは刃物をATC(Auto Tool Changer=自動工具交換)することですべての加工をできるようになりました。こちらもNC装置でプログラムを入力して動かします。

切削加工 (マシニング加工)

マシニング加工(ワークは固定で、刃物が回転)

 旋盤加工もマシニング加工もできる複合加工機

 金属加工で作れられる部品は、旋盤単体、マシニング単体で完結するわけでなく、複数の旋盤とマシニングを使った加工で完成します。生産現場では、生産量の多い部品はなるべく1台当たりの加工時間を減らすようにして、多くの機械を使い時間当たりの生産量を上げるような工夫がされています(工程分割)。逆に試作品のような単品の加工では、少ない機械台数で多くの種類の部品を作りたいという要望がでてきました(工程集約)。この工程集約をするために、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つ複合加工機が開発されました。近年では、切削加工だけでなく、研削加工や歯車加工、積層造形など別の工程も1台の機械でできる新世代の複合加工機も登場しています。

 工作機械は日本が強い!工作機械ビックスリー!

 切削加工機をはじめとする工作機械の分野で日本企業は世界で高いシェアを持っています。切削加工機で作られる部品には、時計などで使われるような小さな部品から、船舶や発電所で使われる大きな部品まで様々あり、それぞれを得意とする数多くのメーカーが日本だけでも100社以上も存在します。その中でも、工作機械のビックスリーと呼ばれ、NC旋盤とマシニングセンタをフルラインナップで揃えるメーカーを紹介します。

 オークマ株式会社

 ビックスリーの中では一番歴史が古く、国内トップシェアを誇る総合工作機械メーカーです。多くの機械メーカーは、NC装置はファナック製や三菱電機製などを採用していますが、オークマはNC装置も自社開発する「機電一体」を特徴としています。衝突防止機能「アンチクラッシュシステム」や加工条件探索機能「加工ナビ」など作業者にとって便利な機能をいち早く搭載しました。自動車部品や一般機械部品などで使われるサイズの機械はもちろん、航空機・船舶向けの大型部品を加工できる大型加工機にも強みを持ちます。

 

 DMG森精機株式会社

 M&Aによって勢力を拡大してきたメーカーで、国内では太陽工機、日立精機を傘下に収めた後、2009年にDMGブランドを持つヨーロッパの大手ギルデマイスターと資本提携、2013年にDMG森精機となりました。さらに2015年にアマダマシンツールから旋盤事業を譲り受けて規模を拡大させています。

 元々、機械の使い勝手には定評がありましたが、DMG森精機となってからは、ヨーロッパの洗練されたデザインを手に入れました。ワークの自動投入など自動化に積極的で、AGV(無人搬送車)や多関節ロボットを含めたトータルソリューションを提案しています。

 ヤマザキマザック株式会社

 簡易に加工プログラムを入力できる対話式NC装置「マザトロール」や、いち早く旋盤とマシニングを融合させた複合加工機を開発するなど、先進的な製品づくりに定評のあるメーカーです。海外進出に積極的で、アメリカ、イギリス、シンガポール、中国にも工場を持っています。非上場ながらオークマ、DMG森精機と並ぶ規模を持ちます。

 複合加工機の豊富なラインナップに強みがあります。

 切削加工機の将来

 工業製品の進化と共に、金属加工もより複雑に高精度な加工が求められてきました。自動車の電動化でものづくりも大きな変化点を迎えていますが、切削加工機も新しい時代に合わせて進化して行くでしょう。